恋口の切りかた

「お前なァ」

俺はクソ真面目な弟に軽く嘆息した。

「風佳とそろって、似たようなこと言ってくれるぜ」

それから、枕元に畳んで置いたままの、留玖の手縫いの着物をちらりと横目で見た。

「顔を上げろ、冬馬」

俺が言うと、冬馬は硬く口元を結んで顔を上げた。

「俺も許嫁がいながら、他の女に想いを寄せた。
そんな俺が、お前と風佳の関係を責められるワケねーだろうが」

「しかし……私のそれは明かな不義密通(*)です!」


不義密通って──


大げさな。


俺はもう一度溜息を吐いて、それから口を開いた。


「わかった。冬馬、お前がそこまで言うなら──」



(*不義密通:現代でいうところの不倫。江戸時代には、妻が他の男と関係を持った場合、夫は自分を裏切った二人を殺すことが許されていた)