恋口の切りかた

「兄上」

俺の前に正座した冬馬は、思い詰めた目に俺を映した。


「私はこの世で最も敬愛するあなたを裏切り、兄上の許嫁である風佳殿と恋仲となった不埒者です!

それがもとで、風佳殿を結城家次期当主の暗殺などという所業に走らせ、兄上をこんな目に遭わせるとは──」


「はあ!?」

頓狂な声を上げたのは、庭に立った隼人だった。


「おいおい……それ……マジ?」

冬馬が口走った内容に、隼人はびびった様子で俺の顔色を窺った。

「まァな」

「あらら~」

隼人はまずい場所に居合わせたという顔になる。


かしこまって座っていた冬馬が、頭を畳に擦りつけた。


「兄上、私は本当にあなたを兄として尊敬しておりました。

しかし風佳殿への思いを断ち切ることもできなかった──

この罪は腹を切って償います。どうか介錯を!」


遊水と隼人が、俺たち兄弟を見比べて、

「えーと……これってひょっとして……修羅場ってやつ?」

隼人の呟きが、ザアザアという雨音に混じって響いた。