恋口の切りかた

隼人が更に数歩、後ろに退いた。


「何? 何なわけ突然? 達人の極意みてーなセリフを口にしちゃって……毒で死にかけて悟りでも開いたのか?」


「ん~。まあ、そんなところかもな」


俺はまた声を立てて笑って、


他人に勝利するばかりで、このままだと見失っていたかもしれないことに気づかせてくれたこの状況に感謝した。


ほんの一刻前までなら、動かなくなった両手に感謝することなど有り得なかっただろう。


「よォ、遊水。俺の腹を殴ってくれたあんたの大陸の武芸」

「ん?」

「あんたが使うところ、初めて見たぜ。あれ、体が回復したら教えろよ」


遊水は鼻を鳴らした。


「そんなに簡単に教えられるものじゃねェな」

「なんだよ、ケチケチすんな」


そう言う俺を眺めて、遊水も肩を揺らして笑った。


「本当に大丈夫そうだ。俺が心配することはなかったな」


年上の友人はそんな風に言って──



「兄上」



庭に面した障子とは反対側の
襖の奥から声がしたのは、この時だった。


「おう、冬馬か。入れ」


俺は声をかけて、


入ってきた冬馬は、左の頬をパンパンに腫らしていた。