恋口の切りかた

「オイオイ、どうした? いきなり笑い出して」

隼人が雨の中で、部屋の中でけたけた笑い声を上げる俺を見て半歩退いた。

「大丈夫かよ。毒がアタマに回ったかァ?」

軽口を叩く隼人に、「いやなに」と俺は笑いながら答えた。


「俺が戦うべき敵は、稽古で対峙した相手じゃなかったと思ってよ」

「はあ?」


隼人が思いきり眉根を寄せた。




「忘れてたぜ」




動かない両手を見つめて、不敵に唇の端を吊り上げ、

それを思い出させてくれた二人の侍たちを見た。




「俺の敵は己だった──」