恋口の切りかた

「フッ、若いってのはいいねぇ。
元服前とは言え漣太郎ももう十三才。お年頃だからな」


……っこの野郎ォ――!!


虹庵にからかわれ、俺はアタマに血が上る。


相手は素手。

こちらは木刀。


普通の大人相手ならすでに打ちかかっているところだが、

さすがに俺も鏡神流の達人である虹庵相手では分(ぶ)が悪い。


「ベツに……平司が彼女と勝負してるから、オレはちょっと外に出ててやっただけだ」


ここはなるべく大人な対応で乗りきる方向性で行くことにした。

おもしろそうな顔をする虹庵を無視し、


「そろそろ決着も着いてるころだろ」

などと平静を装って道場の入り口に向かう。


そのまま中に入ったところで――、


「うおっ!?」


俺はいきなり留玖とぶつかった。


「っぶねーな」

と言いつつ、留玖の顔を見た俺はぎょっとした。


「あ、レンちゃ――兄上、ごめんなさい」

そう言う留玖の目からはポロポロと涙がこぼれていた。