恋口の切りかた

隼人は、どうして俺がそんな質問をしたのかわからないといった様子で、不思議そうに首を捻ってから、


「そりゃ、ますます命が残って良かったって思うだろ。

利き腕を失うような危機に瀕しても、死なずに済んだってことなんだからよ」


細い目の上の眉を寄せて眉間に皺を作りながら、何の淀みもなくそう答えた。


「だいたい俺、蜃蛟の伝九郎とやり合った時、命を捨てる覚悟してたからなァ。

伝九郎の刀を肩に受けた時には、絶対腕を落とされたと覚悟したし。

腕も命も、残っただけ儲けモンって思うだろ、そりゃ」


さも当然だと言うようにそう語る狐目の侍を、俺はまじまじと見つめた。


「まあ、もしも使えなくなったのが右だったら、盗賊につけ狙われることになって剣が握れないってのは困るけど──左でだって剣は振るえるからな」

隼人はそう続けた。

「これまでどおりってワケにはいかなくても、練習すればよ」


俺は大きく目を見開いた。


「……あんたは腕が使えなくなったことを、嘆かねえのか……」


「嘆いたって戻ってこねーんだし、
俺の場合は賊につけ狙われることになったんだから、嘆いてるヒマなんてねーし。

腕が使えなくなったおかげで、命が残ったってことなんだから……ま、仕方ねーだろ」


隼人は苦笑いしながらそう言って、傘の下で左腕を眺めた。