恋口の切りかた

隼人は右利きの剣士だ。

本来ならばこんな雨の日に、右で傘を差して利き腕をふさぐような真似はしないハズだ。

しかし蜃蛟の伝九郎との斬り合いで痛めた左腕は、傘を差すにも具合が悪いということなのだろう。


「ん~? そりゃあやっぱり──」

隼人はだらりと下げた己の左腕を見下ろして、少し何かを考えるようにした。

「──切り落とされてなくて良かったと思った」

「それだけかよ!」

俺は思わず突っ込んだ。

「いや、それだけじゃねーけど」

隼人は不自由そうな左手でぽりぽりと頬をかいて、

「利き腕の右が無事で良かったと思ったし、命が残って良かったとも思った」

「…………」

俺は口をつぐむ。


何なんだ、そのとことん前向きな感想は。

そんなものは、俺が聞きたい答えではなかった。



──だったら、どんな答えが聞きたいと言うんだ?



冷笑的な気分が湧き起こるのを感じながら、

「命が残って良かった──だと……?」

俺は隼人の言葉を繰り返した。


「だったら──もしも、使えなくなったのが左腕ではなく右だったらどうだ?

一生剣が握れなくなったとわかったら……それでもあんたは、命が残って良かったと心から思えるのか?」


俺が口にした内容を聞いて、遊水がさっと表情を険しくした。