恋口の切りかた

遊水が低く笑った。

「やっぱり俺の正体に気づいてたか。あのススキ野で、だな?」

「……つうか、初めて会った時にも金魚の盆栽の話を聞いて、まさかとは思ったんですけど……」

隼人は「有り得ねー」とぼやいて深い溜息を吐いた。

「ほう、金魚の盆栽で……?」

遊水は少し考え込むようにして、

「ああ、成る程。秋山様はもともと鷹匠だったか」

と納得した様子で頷いた。

「『様』とかつけるの、やめてくださいマジで」

隼人は泣きそうな顔になった。

「アナタ、城中で御鷹部屋にも何度か来たことあったでしょ。生き物の飼育に関して知識を交換するために。
だから俺は、伊羽様が金魚の盆栽をしてるってことは知ってたんですよ。けど……」

隼人は頭を押さえた。

「さすがに俺も、城代家老様がこんな町人のなりでウロウロしてるとは思わねーし」

可笑しそうに喉を震わせる金髪の城代家老に向かって、隼人は頬を引きつらせた。

「前に町の居店で、刀を抜きかけた俺を止めた時、円士郎様が『理由が二つある』とか言ってたのも──

考えてみりゃ、友達だっつうのは──賊に味方するワケを尋ねた俺への答えだろ。

本当のもう一つの理由は、目の前の賊が城代家老だったからかよ!

アナタ、昔盗賊だったとか、裏でヤクザ相手の商売やってるとか──どこまで本当の話なんですか」

「あっはっは、全部」

「ぜ──」

隼人は一重の目を見開き、
爽やかに笑いながらあっさり答えた御家老に絶句して

「──有り得ねー」

傘を手にしたままその場にヘナヘナとしゃがみ込んだ。

「このお坊ちゃんも相当デタラメだと思ってたけどよ」

隼人は傘の下から恨めしそうな目を俺に向けた。

「何なんだよ。類は友を呼ぶとかそういうことかよ」

げっそりした口調でそう言って、

それから隼人は、
黙り込んでいる俺の様子に気づいたように、「ん?」と眉を寄せた。


「なあ」

俺はそんな隼人の、傘を握る右手を見た。

「左腕が使えなくなったって知った時、あんたはどんな気がした?」