恋口の切りかた

「何という有様だ、これは──」

真っ直ぐ俺の部屋を訪れた親父殿は、床(とこ)の上で身を起こす俺を見てその場に立ち尽くした。

「いったい何があったのだ、円士郎……!」

「こっちが聞きてえよ」

俺は親父殿を力無く見上げた。

まさかこのような形で、殿様の参勤が終わる前に親父殿と再会することになるとは、思いもしなかった。

「俺にももう、何が何だかさっぱりだ」


行灯の明かりの中で、
俺は親父殿に、風佳に殺されかけたこと、風佳と冬馬のことを説明した。

「む……? 冬馬が、風佳殿とか?」

話を聞いた親父殿は眉間に皺を作った。

「ふうむ……それは儂にも読めなんだな」

親父殿は、顎をごりごりと擦って、

「まあ、お前が無事で何よりだ」

軽い調子でそう言って、ぱしんと膝を叩いた。

「いや、驚いたぞ! 突然江戸の屋敷に、お前が危篤だと報せが届いた時は」

俺はうつむいた。

「悪ィ、親父。留守中にこんなことになっちまって……」

「うむ。とにかく今は、お前は体を治すことに専念するんだな」


親父殿にそんないたわりの言葉をかけられて、留玖の前では抑え込んだ絶望が再び俺の胸に蘇った。


「……もう、治らないかもしれねーんだ」

「うん?」

首を傾げる親父殿に、思わず俺は胸に抱えた不安をぶちまけた。


「両手が動かねーんだよ! 聞けば、俺が盛られた毒は重い後遺症が残るんだそうだ。

俺はもう……剣が握れなくなるかもしれねーんだよ!」