何やら必死の様子の平司につき合って、
留玖は今道場の中だ。

俺はと言えば、

現在、彼女と顔をつき合わせるのを避けて

白い息を切らせながら道場の外で素振り中という、
何とも情けない状況だった。


「おはよう漣太郎」


不意に背中からかけられた声に振り返ると、


「おやおや、随分と雑念だらけの顔だな。
何か悩み事なら相談に乗るぞ。

衝撃的な事実でも発覚したのかな?」


そこにはニヤニヤ笑いを浮かべた虹庵が――


「って、先生! あんた知っててよくも黙ってやがったな」

冬の朝の清涼な空気が良く似合う爽やかな好青年に、
俺はうらめしい思いで視線を向けた。


虹庵は、あっはっは、と声を上げて笑い、

「これまで男友達だと考えていた子が女の子と分かって、どう接して良いかわからない。

漣太郎としては、せめて雑念を振りはらおうとこうやって木刀を振り回している、

というところかな?」


こっ恥ずかしい俺の心情をズバリ言葉にしやがった。