恋口の切りかた

部屋に戻って横になった俺から、虹庵は詳しく腕の様子を聞いて

「異常があるのは両手だけかね? 足は? 歩行には問題ないかい?」

と尋ねてきた。

「ああ、足はふらつくだけだ」

「他に体に異常は?」

「いや……あとはずっと寝てたせいで首と肩が痛えくらいかな」

はは、と俺は笑った。

我ながら、力無い笑いにしかならなかった。

「吐き気などはもうないんだね?」

虹庵は念を押して、「それは良かった」と微笑んだ。

俺には何が良いのかさっぱりだった。

「とりあえず、これで命の危険は脱した。まだ数日は、とにかく安静にしておくように」

虹庵はそう言ったが──



命が助かっても、剣が握れなければ……



俺は奥歯を噛みしめる。


虹庵はまた明日も来ると言って、部屋を出て行き、

障子の向こうの廊下にちょこんと正座して控えていた留玖に、「円士郎から目を離すな」と言い置いて帰っていった。


目を離すな……?


命の危険はもうないんじゃねーのかよ。

嘘か?


俺は皮肉な笑いが浮かぶのを感じて、


「エン……入ってもいい?」


留玖が怖々訊いた。


「ああ」


俺はぼうっと天井を見たまま答えた。