恋口の切りかた

虹庵は怖い顔で俺を見つめて、

「すぐに部屋に戻りなさい、円士郎」

と静かに言った。

「なんで、答えてくれねーんだよ?」

「円士郎、部屋に戻るんだ」

「冗談じゃねえ! 剣が握れなくなったら、俺は──」


いやあああ──、と引き絞るような泣き声がした。

留玖が、俺の体を抱き締めたまま泣いていた。


「……お願いだよぉ……部屋に戻ってよ、エン……」

留玖は泣きながら俺にそう言って、


ようやく俺は、
二日も寝ずに俺の世話をしてくれて、
今も俺の身を案じてくれている留玖の気持ちを思った。


「円士郎、部屋に戻りなさい」


虹庵が繰り返して、


「わかった……ごめんな、留玖──」


俺は力の入らない右手でそっと留玖の頭を撫でて立ち上がった。