恋口の切りかた

「エン……!? な……何言ってるの!?」

留玖が部屋から飛び出してきて、俺にしがみついた。

「そんな体で……駄目だよ! まだ寝てないと! ね、部屋に戻ろ……?」

必死になってそう言う留玖に微笑んで、

俺は廊下を道場のほうへと歩いていった。

「エン……!」

後ろから悲鳴が聞こえて、

留玖はすぐに駆け寄ってきておろおろと俺の周りを歩きながら、懸命に部屋に戻るように説き続けたが、俺は黙って道場へと向かった。



渡り廊下を渡って道場に着くと、

俺は門弟たちが帰ってしんと静まり返った道場の中へと入った。

木刀を二本手にして、
一本を力の入らない手で握り、
もう一本を、不安げな表情でついて来た留玖に渡した。

「留玖、手合わせだ。つき合ってくれ」

留玖が泣きそうな顔になった。

「な……何言ってるのぉ。お願いだよ、エン。部屋に戻ってよ」

懇願する留玖に向かって木刀を構えて、

「いいから! 行くぞ」

怒鳴って、俺は打ちかかった。


留玖はほとんど無意識のように動いて、

俺が振り下ろした一撃を横へと打ち払って、


俺の手から、木刀がすっぽ抜けた。