恋口の切りかた

ぼんやりと天井を眺めながら考えていたら、

「申し訳ありません!」

冬馬が突然、枕元で土下座した。

「……なんでお前が謝るんだよ?」

俺は苦笑しながら生真面目な義弟を見つめて、

「それは……その……」

冬馬が畳に顔をこすりつけたままで口ごもった。


冬馬の様子はどこか変だったが、
結局そのまま彼は何も言わずに下がって、


一人きりになった部屋の中で、

手に持ったままだった着物を枕元に置いて、俺はそばに置かれていた湯飲みの水を飲もうとして──


手に力が入らず、湯飲みを落とした。


盆の中で、水を撒き散らして湯飲みが転がる。


背筋に冷たいものが走るのを感じながら、

倒れた湯飲みを慌ててもう一度持ち上げようとして、


再び手から湯飲みが落ちた。


ぞっとしながら、震える両手を握って、開いて──



初めて俺は、

冬に冷たさで手がかじかんだ時のように、
自分の両手が動かず、力がまるで入らないことに気づいた。


「なんだよ、これ……? どうして──」

愕然としながら呟いて、



命が助かっても、重い後遺症が残る。



脳裏をまたあの言葉がよぎった。

胸の中に、泥水のように真っ黒なものがじわじわと広がっていくのがわかった。