恋口の切りかた

屋敷の奥の座敷の中は、昼間だけれど薄暗くて、しんと静かで

「エン……好きだよ……」

私は呟いて、手の中の薬の包みを開けた。

ちょっと迷って、先に水に溶かしたほうが飲ませ易いかもしれないという虹庵の言葉を思い出して、

枕元に置かれていた湯飲みの水に粉薬を溶かし入れた。


眠ったまま動かない円士郎を見つめる。

幼い頃からずっとそばにいてくれた人。

何より大切な、この世でたった一人の人。

「どうか死なないで……」

痛々しい姿を見ているだけで溢れそうになる涙を我慢して、


「薬だよ、エン。飲んでね……」


耳元で囁いて、

薬の溶けた湯飲みの中身を少しだけ口に含んだ。


じわっと苦みが広がる。

円士郎の頭の横の布団の上に手をついて、

目を閉じた円士郎の顔を見下ろして、


トクン。トクン。

自分の中心で音が鳴っている。


静かな部屋の中で、その音を聞きながら、

私はそっと円士郎の唇に自分の唇を重ねた。