恋口の切りかた

眠っている円士郎と、二人っきりになって、

急に、どきどきと私の心臓はうるさく鳴り始めて、


「エン……」


渡された薬を見つめた。


どうしよう。

引き受けてしまったけれど、とんでもないことじゃないのかな……これ。

口移しなんて、当然こんなのやったことない。


円士郎と唇を重ねるのは、初めてではないけれど……


そこまで考えて、


──唇を重ねるのは、初めてではない?


な、なに考えてるの、私──!?

円士郎がしてくれた優しい口づけの感覚が唇に蘇って、手から薬を落としてしまった。


一人でほっぺたを押さえて、
破裂しそうな心臓の音を聞いて、


畳の上の薬をそろそろと拾い上げて、円士郎の寝顔を覗き込んだ。


硬く瞼を閉じたままの顔は、やっぱり少し苦しそうで、


わ……私が、エンを助けなきゃ……


私は自分に言い聞かせて、


震える手をそっと伸ばして、円士郎の頬に触れた。

ちょっと触っただけなのに、
指先に稲妻が走って、
火が出るんじゃないかという気がして、

私は慌てて手を引っ込める。


考えてみたら、円士郎はいつも私に触れてきてくれたけれど、

自分から彼に触れるのは初めてだった。