恋口の切りかた

冬馬は言葉を失った様子で、そんな私と、眠り続ける円士郎とを眺めていた。

「軽蔑するよね……」

記憶の中のいつかの川で、一緒に遊ぶ私と漣太郎を見つけて彼がかけてきた言葉を思い出した。

何より身分を重んじる冬馬の目に、

この家に迎え入れられた農民の分際で、次期当主の身分の人に思いを寄せる私の姿は、どれほどいやしく恥知らずな娘として映っているだろう。

「でも、お願いだよ冬馬。今だけは、エンのそばにいさせて……!」

懇願する私を見て、冬馬は小さく首を振った。

「どうして私が姉上を軽蔑するのですか……」

冬馬は困ったような顔をして、

「兄上を、頼みます」

と、頭を下げて部屋を出ていった。


昼過ぎに、虹庵が円士郎の様子を見に再び訪れた。

眠ったまま目を覚まさないと私が伝えると、

虹庵からは「このまま死ぬか、目を覚まして助かるかどちらかだ」という答えが返ってきて、

怖くて、悲しくて、私は泣いた。


それから、

円士郎に飲ませるようにと言って薬を渡されて、

虹庵もやはり、私には他の者と交代して休むようにと言ったけれど、私はそれを拒んで、円士郎が元気になるまで自分がそばにいると言い張った。


虹庵は諦めた様子で溜息を吐いて、

やや逡巡するように私と円士郎を見比べた後、


「では留玖、その薬は君が円士郎に飲ませなさい」


と言った。


「意識のない者がむせたり喉につまらせたりしないように、口に含んで少しずつ、口移しで与えるんだ。できるかね?」