恋口の切りかた

「留玖、もう遅い。君も休みなさい」

残された部屋の中で、虹庵が私に言った。

言われて気づけば、
いつの間にか日は完全に落ちて、座敷には行灯の火が入れられていた。

「いやです! エンのそばにいます……!」

私は激しく頭を振って、円士郎にしがみついた。

「円士郎は誰か他の者に見させよう」

「私が見ています」

私はふるふると首を横に振り続けた。


根負けした虹庵が、

「施せる処置は終えた。
発作は治まっているが、何かあればすぐに駆けつけるから使いを寄越しなさい」

と言って引き上げてゆき、

私は円士郎に渡すはずだった着物を部屋から持ってきて、胸に抱いたまま円士郎を見つめていた。


時々手拭いで、彼の額の汗を拭ってあげて──


円士郎がこのまま死んでしまうかもしれない。

そう思ったら、

悲しくて、
心細くて、
怖くて……

着物を抱き締めて、泣いた。