恋口の切りかた

「円士郎殿……!」

背中から、亜鳥の声がした。

「馬鹿者……!
見ていてくれと言ったのに……!
私たちのことを、見ていてくれと言ったのに──お前が先に死ぬなど、私は許さないからな……」

亜鳥の言葉の意味は、私にはわからなかったけれど、

その言葉に続いて泣き声が聞こえて──

振り返ると、青文の胸に顔を埋めて亜鳥が泣いていた。

「我々は一度、屋敷に戻ります」

亜鳥の肩を抱いて支えたまま、青文が言った。

「留玖殿。虹庵殿。
円士郎殿に万一のことがあれば、どうか伊羽家の屋敷に内密の報せを」

私と虹庵に向かって、彼はそう言って、

「そうか。君が──」

その言葉から異人の血を引く金髪の若者の正体を悟ったのか、
虹庵は一瞬目を見開いて、

「──彼女を頼みます」

青文と、泣いている亜鳥とを見比べてぽつりと言った。

青文が会釈して、二人の姿が部屋の入り口から消えた。