恋口の切りかた

「な──うちの女中が……?」

冬馬が戸惑ったような視線を風佳に注いだ。


「──聞いたな」

金髪の御家老は冷徹な声で言って、閉じられた襖の向こうを振り返った。

「宗助めはそこにいるんだろう? まんまと毒を盛られて主の命を危険にさらして、忍が聞いてあきれる」

ぐっ……、という低いうめきが襖の向こうから聞こえた。

「その女中を捕らえよ。詳しい話を聞く。
貴様も主君を殺されかけてそのままにするつもりはあるまい」

承知、と低い囁きが返ってきて、襖の向こうがしんと静まった。

「おい」と亜鳥が青文の着物の袖を引っ張った。

まるで武家の人間のような口調で言って慣れた様子で指示を出した金髪の町人に、冬馬が怪訝そうな顔を向けていた。

「おっと」

青文はぺしりと額を打って、

「あっはっは。失礼、つい……」

と、とぼけた調子で言って笑った。


凍りついていた座敷の空気が少しだけ緩んで、


「すみません、風佳殿。あなたに、ひどいことを……」

冬馬が風佳の傍らに膝を突いて、優しくその肩を撫でた。


「それでも──私にとって、兄上はあなたと同じくらい大切な方なのです。

だから、あなたの行いは許せなかった……!」


風佳が涙を浮かべた瞳で冬馬を見上げた。


「だが、あなたをここまで追い込み、兄上の命を奪いかねない真似に走らせるとは──

全て私のせいです……どうかお許しを」


そう言って冬馬が唇を噛みしめて、


風佳がその胸にすがりついて泣き崩れた。


私はそんな二人を黙って見つめていた。