恋口の切りかた

「へえ? お前って、こういう絵図は気味悪がってなかった?」

畳の上に広げられているのは、人間の体の中身を描いた図だ。

俺が首を傾げると、

「あ、あのね……こういう人の体の中身って、医術だけじゃなくて、剣術にも関係あるかなあって思ったの」

留玖はほっぺたを赤くしてちらちら俺を見上げるという、可愛すぎる仕草を見せながらそう言った。

「ほら、刀で袈裟懸けに打ち下ろした時って──首の所にある、ここの大きな血管を切ってるってことでしょう?
骨を絶たなくてもうまく致命傷になるように、合理的な動きになってる。

人体についてよく知っておけば、他にもそういう斬り方を工夫できるんじゃないかなあ、と思って……」

絵図を指さしながら言った留玖の言葉を聞いて、

「え──?」

雪丸の笑顔が引きつって、

「成る程な、確かにそうだ。へえ、さすが留玖だな」

俺は感心した。

留玖はえへへ、と笑って、俺も横に座り込んで、ここをこう斬るといいんじゃないかなどと意見を交わし合って──

鼻をすすり上げる音に気づいて、ハッと雪丸を振り返ると、

「こ……これは、人を救うための学問なのです……!」

雪丸はべそをかいていた。

「そんなお話に使うなんて……だめです! 姉上と兄上には、もう見せません……っ」

ええ!?

がさがさと絵図を丸めて、大事そうに抱え上げた雪丸を見て俺と留玖は慌てた。