恋口の切りかた

「なあ留玖、今日二人で町でも歩かねえ?」

首筋から手を離して、一つにまとめた私の髪の毛に指をからめながらそう言ってくる円士郎は──


いつも通りかと思っていたけれど、やっぱり少し違っていた。


いつもよりも上機嫌で、凄く楽しそうだった。


「今日は……加那さんと、稽古の約束をしてあるから……」

私はおずおずと口にした。

ちっと円士郎が舌打ちして、

「なんだよ」

やっぱり浮かれた口調のままでそう言って、

「仕方ねえか。じゃ、また今度な」

するりと髪から手を離して、私のほっぺたを一撫でして立ち去っていった。


眩しい朝日の中で遠ざかる背中を見送りながら、私は騒いでいる胸を両手で押さえた。


どうして……?


同じ疑問をまた、胸の中で繰り返した。


なんで、こんなことするの……エン。


こんな風に言われたら、

こんな風に触られたら、


いずれ諦めなくちゃいけない想いなのに、


私、エンのこと

もっと好きになっちゃうよ……。