恋口の切りかた

私の頭を指さして言う円士郎は、拍子抜けするくらい普段と変わらない。

昨夜、あんなことがあったのに……

「せっかくやったのに──ちゃんと使えっつったろうが」


どうしてエンは、そんなにいつも通りでいられるのよう……?


「だ、だって……なくしたり壊したりしたら、やなんだもん」

私は一人で赤くなりながら急いで答えた。

「せっかくエンがくれたかんざしだから……大切なかんざしだから……」

うう。
意識しちゃって、エンの目をまともに見ることができない……。


くっくっくっ……と嬉しそうに笑う声がして、庭に立った円士郎が下から私の顔を覗き込んだ。

「可愛いこと言ってくれるよなァ」

円士郎にそんなことを言われて、
私はますます円士郎のほうを見ることができなくなって、

「構わねーからつけろよ。まァ──」

円士郎の手が伸びて、廊下の上の私の首に触れた。


「こっちはつけたままだからいいか」


そう言って円士郎は私の首筋を撫でて、


背筋が粟立つような、
体の力が失われるような
そんな感覚が走って、私は思わず声を漏らしそうになった。

斬り合いで相手の刃が首筋に届きそうになる時の感覚とも違う感じ。


円士郎の指が触れているところに何があるのかははっきりとわかる。

鏡の中の私の首筋には、今朝も円士郎がつけた赤い痕がくっきり残っていた。