恋口の切りかた

私は少しだけホッとしながら霊子を見上げた。

「あ、ありがと……霊子さん」

もしも霊子がいてくれなかったら、どうなっていたんだろうと思った。

安心したような──
少し残念なような──

残念!? って何考えてるんだろ私……


私はほっぺたを押さえた。


ほっぺただけではなくて、

円士郎に触れられた感覚が残って、体中が火のように熱い。


天袋で霊子がうふふふふと笑って、

「おつるぎ様、ここ」

首筋をとんとん、と指でつついた。

「ふえ……?」

私は着物を押さえたままそろそろと鏡の前に移動して──


肩まで覗いている白い肌の、首筋の辺りに、


今の出来事が夢ではない証拠のように、

赤く散らされた花弁にも似た痕がくっきり浮かび上がっていた。


「ど……どうしよう……」


私の声と霊子の含み笑いが部屋の中に響いた。

鏡の中の私の髪では、銀色の桜の花がきらきらと優しく輝いていた。