恋口の切りかた

え……?


自分が何をされているのかわからなくて、頭が真っ白になった。


温かくて柔らかい感覚が離れて、

塞がれていた口が解放されて、


「何でもお礼にくれるんだろ?」


目の前で、円士郎の顔が微笑んだ。


そのまま円士郎の顔がまた近づいて──


「……え、エン……待ってよ……」

私は真っ白な頭のまま、後ろに身を引いた。

自分の唇に手で触れる。


私、今……円士郎に口づけをされて──


心臓が、壊れるんじゃないかと思うほど大きく速く鳴っている。

「な……なんで……こんなこと……」

「なんで?」

私が逃げた分、円士郎は近づいて、

「なあ、留玖……本当にわかんねえのか?」

私はまた一歩後ろに下がって──円士郎が一歩前に出た。

「わ……かんない……」

私はまた後ろに逃げたけれど、

背中が壁に当たってそれ以上逃げられなくなってしまった。

「まだわからねえのかよ」

私を壁際に追いつめた円士郎は、

少し悲しそうな──
切なそうな──
そんな瞳で私を映して、

「だったら今、教えてやるよ」

私の頬に触れた。

円士郎に触れられているだけで、そこから全身の力を奪い取られていくような気がして──

「まだお礼には足りねーな」

ふふっと、円士郎が笑って

逃げ場のない私はぎゅっと目を閉じた。