恋口の切りかた

「これ……これ、大事にするね」

泣きながら私は微笑んだ。

「私、大事にするから……」

そう言って、私は胸の中の小箱を強く抱き締めて──


円士郎の顔はぼやけた視界の中でよく見えなかったけれど、

じっと私に視線を注いでいた円士郎が、「おう」と優しい声で言って私の頭を撫でてくれた。


それから不意に円士郎の手が止まって、


「それ、貸してみな。髪に挿してやるよ」


そう言って、円士郎が立ち上がった。


円士郎は私の部屋の中をきょろきょろと見回した。

「えーと、鏡は? お前、普段使ってねえの?」

「つ……使ってるよ……!」

私は慌てて、部屋の隅に追いやっていた鏡を引っ張り出してきた。


……本当はあんまり使っていなかったりする。


だってお化粧なんてしないし、
髪だって一つにまとめるだけだし……


私は被せていた布を取って、久々に鏡を開いて、


私をその前に座らせて、円士郎は消えていた行灯の火を入れた。


それから銀に光るかんざしを手にとって後ろに回って

一つに括っている私の髪の束の根本に、繊細な銀の輝きを挿してくれた。


「お、似合う似合う」

鏡の中で円士郎が笑った。

私は鏡に映る自分と、銀色の桜の花に見入った。


こんな贈り物を、自分も男の人から──

それも大好きな円士郎からもらえたことが、まだ信じられない。