恋口の切りかた

「ねえエン、海野清十郎様って知ってる?」

冬馬の様子が気になった私は、円士郎が屋敷に戻ってくるのを待って尋ねた。

「今日の帰り道で会って……」

「ん? ああ、確か最近、家老見習いで城に出入りするようになった奴だろ」

有名なのか、円士郎からはあっさり答えが返ってきた。

「他国から養子に来たって聞いたけど……」

「ああ。もともと殿様の四男だったって有名だぜ? 確か年は今年で二十だったかな」

殿様の──お子さま……。

「ふうん……」

私はあの家来衆と冬馬とのやり取りを思い出して、考えこんだ。

冬馬はそんな偉い家老見習いの人の家来と、どういう知り合いなのかな?

「こっちのほうも結構使うらしいけど」

と、円士郎は剣を振るう真似をして見せた。

へえ、そうなんだ……。

私はあの若者が、手合わせ願いたいと言ってきたのを思い出した。

「……そいつがどうかしたのか?」

顔を覗き込まれて、私はびっくりしてふるふると首を横に振った。

「な、なんでもないよ」

「そうか……?」

円士郎は心配そうな顔で私のことを見つめてきて、

私はほっぺたが熱くなる気がして顔を伏せた。

「……ならいいけどよ」

円士郎はぶっきらぼうにそう言った。
私がちょっとホッとしながら円士郎を見上げたら、

「そいつ、家中じゃ女にも人気があるって噂だ」

円士郎は不機嫌そうにそっぽを向いて吐き捨てた。