恋口の切りかた

お供の者たちも主の後を追いかけて立ち去ろうとし──



家来の侍の一人が、


すれ違い様、


冬馬の肩に手を置いた。


「これからよろしくな、お坊ちゃん」


武骨な印象の三十絡みの侍は、冬馬の耳元に口を寄せてそう囁いて──


「おいおい、酷いな。少し離れてる間に俺たちのことを見忘れたのか?」


眉根を寄せた冬馬に、近くにいた──爬虫類のような目つきをした若い侍も顔を寄せてそう囁いた。


すると、


冬馬の目が大きく見開かれて、


「まさか──」


その顔が愕然とした表情を浮かべた。


二人の侍はにやにやと笑って、


「久しぶりだな」


と、冬馬に言った。


私は何が何だかわからなくて、冬馬とその二人を見比べた。


「おい、何をしている? 行くぞ!」


離れた位置から、海野清十郎がお供の家来に声をかけて、

弾かれたように冬馬がそちらを振り向いて、目の前でニタニタ笑っている侍たちと、家老見習いだという若者とを交互に見た。