恋口の切りかた

「あの家紋、家老の海野家のものですね」

歩いてくる一行を不審そうに見たまま、冬馬が言った。

「海野家?」

私が首を傾げると、

「はい。最近、他国から養子に入った方がいると聞いております。
今は家老見習いをされているとか。あれがその清十郎様でしょう」

冬馬はそんな風に説明してくれた。


清十郎様……。


近くまで歩いてきて若侍は足を止め、こちらに会釈した。


線の細い、すっきりした面差しの青年だった。


年の頃なら、加那と同じで二十歳前後だろうかと私は思った。


「結城家の留玖殿と冬馬殿とお見受け致します」

若侍は、柔らかく微笑んで丁寧な口調で挨拶して、

「私は海野清十郎と申します」

冬馬が言ったとおりの名を名乗った。

柔和な表情にも関わらず、その目つきはどこか冷たい。

「留玖殿は随分とお強いとお聞きしております」

海野清十郎は氷のような目元で私ににっこり微笑んで、

「いつかお手合わせ願いたいものですね」

と言った。

「あ。はい」

私も慌てて頭を下げた。

「私でよろしければ、いつでも……」