恋口の切りかた

「結城様……あの、おれは……」


立ちつくしたまま不安そうな顔をする刀丸を俺の隣に座らせて、

親父殿は豪快に笑った。


「いやいや、娘なら娘でよし! 武士に二言はないぞ刀丸!」


母上が少し顔をしかめた。


「それにしても、娘に迎えるなら新しい名前を考えてはどうです?

トウマルなんて、止まると言うより鶏ではないですか」


──ニワトリ?

母上のこのセリフはまた俺にはよくわからない。


「……レンちゃん」


俺の顔を横からうかがうようにして、刀丸がおずおずと口を開いた。


「やっぱりおれのこと、男だと思ってた?」

「…………おう」

「ごめんね? 何度も言おうと思ったんだけど……」

「……おう」


ぼう然としつつも、
俺がかろうじて短い応答を返していると、


「あの、レンちゃん……怒ってる?」


刀丸は申し訳なさそうにそう言った。