恋口の切りかた

縁側の頭上には、遊水からもらったと言って、昨日円士郎がくれた金魚玉が吊してある。

風鈴を逆さまにしたような、透き通ったびいどろの玉の中には水と赤い魚が入っていて、
遊水こと青文が作出した品種だというその金魚は、長いひれと尾をひらひらと天女の羽衣のように優美に動かしていた。

とっても綺麗だけれど、ずっとびいどろの玉の中に入れていたら死んでしまうのだそうで、
夜のうちはタライに移して、昼間だけこうして吊して楽しむようにと円士郎が言っていた。


「その櫛──」

私の脳裏に、春に冬馬と町に行った時の記憶が蘇った。


風佳の頭にある櫛は──あのとき小間物屋で、冬馬が熱心に見ていたものにそっくりだった。


その後、買いたい物があったからと言って、私を橋に残して冬馬は再び町に引き返していって、

何か包みを抱えて戻ってきた。


「あ。これは……」

風佳が頬を赤く染めて、手を頭に伸ばして櫛に軽く触れた。

「いただいたものなのですけれど……」

「冬馬からもらったの?」

私は思わず口にしてしまって口を押さえた。

「え……?」

風佳はキョトンとして、私は慌てた。

「ごめんなさい、違うよね……」

「まあ、どうしておわかりになったのですか?」

風佳は不思議そうにそう言った。