恋口の切りかた

以前と変わりなく接してくる亜鳥と言葉を交わし、親父殿が失脚に追い込んで切腹して果てた相手の墓に手を合わせて、

「ここのところは色々と大変だっただろうけどよ、また屋敷に遊びに来いよ、留玖も喜ぶし」

墓地を後にして女中と三人で連れ立って歩きながら、俺は気になっていた内容を口にした。

「その、あんたが俺たちのことを許してくれるんなら、だけどよ」

「許すも許さないも──」

亜鳥はくすりと笑った。

「私は結城家に対して恨みなど抱いていないよ」

「……なら、いいけどよ」

俺が彼女の表情を窺うと、

亜鳥もまた、あの男のようにどこか晴れ晴れとした笑顔を作った。

「結城家を恨むのは筋違いだと、あの人が私に言った」

俺は言葉に詰まる。


青文の野郎──

あくまで彼女の憎しみは自分一人が引き受けるつもりだったのかよ……。


「俺はあんたに感謝してるよ」

仇を生かした女に俺がそう告げると、


ふふっと、笑い声が返ってきて、


「不要だ。私は私のための選択をした」


亜鳥はきっぱりとそう言った。

その表情に後悔の色は何一つなかった。


「……そうか」


俺は頷いて、


彼女の目を真っ直ぐ見つめて、
一言、尋ねた。


「あんたは今、幸せか?」