亜鳥が全てを知ったということは、
五年前の雨宮失脚に結城家も荷担したことをも知ったということだ。
亜鳥が今、俺や留玖に対してどのような感情を抱いているのか──
俺は気になったが、この日は結局、彼女を襲った者についての報告を内密に持ってきただけの訪問に終わり、
亜鳥とは大した言葉を交わすこともできなかった。
俺が彼女に再び会ったのは、
祝言から半月が経ち、今度は隼人たちの祝言も間近に迫った八月の半ばのことだった。
いい加減話をしたいと思って伊羽家の周りをうろついていた俺が、中から出てきた奉公人を捕まえて聞くと
亜鳥は不在で、家の者の話では雨宮家の菩提寺に墓参りに行っているとのことだった。
菩提寺の場所を聞いて、直接寺に向かった俺は──
ふと、墓地の入り口で、
傾いた黄色い西日の中を見覚えのある侍が中へと入っていくのを見かけた。
墓参りにしては、ひしゃくや菊花の入った手桶も下げず、
手ぶらのその男の格好は奇妙だった。
同じく手ぶらの俺も、他人のことを言えた義理ではないのだが。
一つの墓石の前で足を止め、
手を合わせるでもなく目の前の小さな墓を見つめる男は、年の頃ならば五十にさしかかろうかというところだろうか。
「菊田殿」
俺は男に声をかけながら、静かに歩み寄った。
「これはこれは」
俺に気づいた男が、虚無の穴のような目を俺に向けた。
「円士郎殿、最近のご活躍は耳にしておりますぞ」
トロリとした気怠そうな表情で俺を見つめてくるのは、俺たちと同じ先法御三家の一つである菊田家の現当主、菊田水右衛門だった。
五年前の雨宮失脚に結城家も荷担したことをも知ったということだ。
亜鳥が今、俺や留玖に対してどのような感情を抱いているのか──
俺は気になったが、この日は結局、彼女を襲った者についての報告を内密に持ってきただけの訪問に終わり、
亜鳥とは大した言葉を交わすこともできなかった。
俺が彼女に再び会ったのは、
祝言から半月が経ち、今度は隼人たちの祝言も間近に迫った八月の半ばのことだった。
いい加減話をしたいと思って伊羽家の周りをうろついていた俺が、中から出てきた奉公人を捕まえて聞くと
亜鳥は不在で、家の者の話では雨宮家の菩提寺に墓参りに行っているとのことだった。
菩提寺の場所を聞いて、直接寺に向かった俺は──
ふと、墓地の入り口で、
傾いた黄色い西日の中を見覚えのある侍が中へと入っていくのを見かけた。
墓参りにしては、ひしゃくや菊花の入った手桶も下げず、
手ぶらのその男の格好は奇妙だった。
同じく手ぶらの俺も、他人のことを言えた義理ではないのだが。
一つの墓石の前で足を止め、
手を合わせるでもなく目の前の小さな墓を見つめる男は、年の頃ならば五十にさしかかろうかというところだろうか。
「菊田殿」
俺は男に声をかけながら、静かに歩み寄った。
「これはこれは」
俺に気づいた男が、虚無の穴のような目を俺に向けた。
「円士郎殿、最近のご活躍は耳にしておりますぞ」
トロリとした気怠そうな表情で俺を見つめてくるのは、俺たちと同じ先法御三家の一つである菊田家の現当主、菊田水右衛門だった。



