恋口の切りかた

「初めから望まれずに産まれてきた子供だという象徴だったのか……

……などと考えるなよ?」


俺の心を見透かしたように、親父殿が言った。


「こんなのはよくある話だ。
単なるまじないのようなもんだし、前に聞いた話じゃ、お前が『刀』というまた別の意味を与えたんだろう」


それから親父殿は、しかしこいつは驚いた! と膝を打った。

「息子にするつもりだったが、まさか娘とはなぁ……」

「まあ、あきれた!」

母上は、
うなる親父殿と
絶句している俺と
固まったままの平司とを順番にながめて、

「親子三人そろってこんな勘違いとは!」

「いや~、だってなァ」

「だってじゃありませんよ。あなたの弟はちゃんとわかっていたというのに」


そんな母上の言葉を聞いて、俺はようやく──あのとき道場で虹庵が何を言わんとしていたのか理解できた。

当の虹庵は往診があるからと、夕飯の誘いを断って先ほどとっとと帰ってしまったのだが。

彼は、俺が刀丸を屋敷に運び込んで診せた時にすぐ気がついたのだろう。



そういうことはもっと早く教えてくれよ、先生!