恋口の切りかた

「おつるぎ様の具合はどうだ?」

「死ぬつもりだった誰かさんが無事だって知ったら、元気になってたよ。
今日も部屋で大人しく寝てるけどな」

「まだ表に出られねえほど弱ってんのかい?」

「……いや。単に俺が心配だから、表に出したくねーだけだ」

「ククッ、そいつは過保護なことで」

喉を鳴らして笑い、くだけた口調でそんな軽口を叩いてくる男は、

以前ならば城代家老の姿の時、
このような喋り方をすることも、
本来の声を使うことも決してなかったのだが──


本当にいったい何があったのか……


うーむ、謎である。


「それで、俺を襲った闇鴉の一味のことだが……」

青文は真面目な声音になった。

どうやら亜鳥に席を外すように言ったのはこの話をするためだったらしい。

「ああ──今、神崎帯刀に死体を調べさせてるけどよ……口を利く奴が皆無じゃあ、目的も何もわからねーな」

話では、鎖鎌の使い手が仲間を殺して去ったということらしいが──

「そいつ、あんたに恨みを抱いてる様子だったんだろ?
顔に見覚えはなかったのか?」

「奴は明かりによって顔が照らされないぎりぎりの間合いを測って、それより先には決して近づいて来ようとしなかった。
残念ながら顔は見えなかったな」

「一味の中で、鎖鎌を使う者の噂とかは?」

裏の世界に通じた城代家老に俺は尋ねてみたが、

「いや。……奴は恐らく一味ではないな」

「なに?」

俺は眉をひそめた。

「どういうこった?」

「仲間をわざわざ殺して去るなどという真似は、闇鴉の一味らしくない。
何者かは不明だな。ただ……腕に罪人の刺青が見えた」

「島帰りか?」

「おそらく……俺の外見を見て反応し、緋鮒の仙太に恨みを持っていた様子から考えて──
俺が賊時代にハメて、罪を押しつけ島送りにした連中の誰かだとは思うが」

「あんたそんなことやってたのかよ……」

とんでもない御家老に、俺は苦笑した。