恋口の切りかた

「そんなワケだからよ、ススキ野の襲撃事件は──完全にアレだ。
亜鳥に振られた腹いせってヤツだな。

特に政治絡みで雨宮家や伊羽家に恨みを抱いての犯行ってワケじゃあなさそうだぜ?」


俺は今、

捕らえた浪人たちが吐いたと昨日の朝に隼人から聞かされた、亜鳥を襲わせた黒幕の名前を伝えに伊羽家の屋敷を訪れていた。

祝言の翌々日である。


あの事件の後、
隼人の立ち会いのもと、こういうことに通じていそうな宗助に拷問を頼んでおいたのだが……

浪人たちが口にしたのは、伊羽家との縁組みが決まる前、遊水に紹介されて亜鳥を妻に娶りたいと申し出てきた家のうち、

その家格から見向きもされなかった者の名だった。

花嫁を辱めることで
伊羽家、雨宮家、両方の顔に泥を塗って
袖にされた復讐をしようという──

武士の風上にも置けない情けない理由で亜鳥を襲わせたようだった。


「で、どうするよそいつ?」


座敷に通された俺は
出された茶菓子を頬張りつつ、目の前の男に尋ねて──


くっくっく……と敵対者を許さない男は低い笑い声を漏らした。


「面白い真似をしてくれるな。
その黒幕殿の処分についてはこちらで行うことにするぜ」


人払いされた座敷の奥で、

覆面の御家老は耳に馴染んだ口調と声でそう言い、


「ううむ、私を襲わせた者に同情する気はないが……ご愁傷様というところだな」


その隣に座った奥方は、

俺の報告を聞いた旦那様が放っている剣呑な空気を感じ取ったのか、肩をすくめた。