恋口の切りかた

俺は奥歯を噛みしめた。

「俺は、あんたはこの国に必要な人間だと思っている」

仇のもとに嫁いだ白無垢姿の彼女に聞こえるように、俺はハッキリとした声で告げた。

「それは、私や貴殿が決めることではない」

俺の言葉には、顔の見えない花婿からどこまでも頑なな言葉が返ってきた。

「彼女には、知る権利がある」

俺ではなく、隣に座った女のほうに向けられた覆面から発せられた声には

表情が見えなくとも、俺にはもはや入り込むことのできない覚悟がありありと滲んでいた。



俺は悲しい花嫁を見つめて、
俺の今の言葉と思いが、彼女に届いていることを祈った。


それしか、この二人の友のためにできることはなかった。




宴がお開きになり、屋敷へと引き返して──


俺は、どんな顔をして留玖に会えば良いのかわからなかった。


留玖は亜鳥と青文のことを心配して、自分は大丈夫だからと俺を送り出してくれたのに……


「留玖……」

そろそろと開いた襖の向こうで、少女はすうすうと寝息を立てていた。

少しだけほっとしながら、彼女の枕元に座って、

外の星明かりによって、わずかに青白く照らされている障子を眺めた。