恋口の切りかた

考えてみると、あの日交わした会話も含め

遊水としても青文としても──

こいつが他の町のヤクザ連中や家中の家臣たちとは違って、俺に対し
決して、名家の御曹司を甘やかすような態度をとらなかったのは、

いずれこの国の先法家の一つの当主となる俺を育てようとしてくれていた、ということなのだろう。


「どうか人から尊敬されるお人になってください」

幼い日に耳にした留玖の言葉と、

そして彼女という存在そのものが、

ともすれば捻くれた人間に育っていたであろう俺を変えてくれたかけがえのないものであるように、



このような年上の友というものも、得難い存在であると思う。



そう考えながら──出かけていった夜の祝言の席で、



この婚儀の裏にあった彼の真意を知り

俺は戦慄した。