恋口の切りかた

半年前のあの日、


「私も貴殿に今日ここで顔をさらすつもりなどなかったが、気が変わった」


そう言って、覆面家老はその顔を覆う頭巾に手をかけ


「これは、私の誠意と受け取られよ……」


剥ぎ取った布の下から現れたのは、





見知った男の面相だった。





俺はあんぐりと口を開けて固まった。


夕闇の中でもそうとわかる、金の髪、緑の瞳、白い顔──


「てめ……遊水!?」


声を上げた俺に、


「いかにも」


不自然に作られたくぐもった声ではなく

いつもの耳慣れた声が、悪びれた様子もなくくつくつと笑いながらそう答えた。