恋口の切りかた

今すぐ抱きつぶして自分のものにしたくなるのを、どうにかこうにか抑えて、

「俺が戻るまで、絶対に無理すんなよ」

時々とんでもない行動に走る留玖に念を押して、

「あいつらのことも大事だけど、俺が一番大切なのはお前なんだからよ」

微笑み返しながらそう伝えた。


そうしたら

留玖の頬が、かああっと朱を帯びて

彼女は、掛けてあった羽織に鼻先まで顔を引っ込めて、


「ありがと、エン……嬉しい……」


再び俺の心臓を撃ち抜く発言が飛び出した。


やべェ……!

祝言に行かねェと……

留玖が弱ってるこんな時だってのに──
俺、これ以上ここにいたら何しでかすかわからねーぞ……!?


自分の頭が──男という生き物の頭がどれだけ馬鹿にできているのかを噛みしめつつ、俺はふらふらと留玖の部屋から退散した。


それにしても──

なんだか最近、留玖は妙に可愛い態度を見せる瞬間があって危険だ。

などと、廊下を歩きながらまたしても馬鹿で脳天気かつ極めて不謹慎なことを考えてしまう俺。


クソ、アホか。
一人で盛り上がって──やっぱり留玖のこと意識しすぎなだけだよなあ……。


本当に重症だ。

俺は大きく溜息を吐いた。