【円】
留玖が再び横になるのを確認して、俺は枕元から立ち上がった。
彼女は健気に自分は大丈夫だと俺に告げてきたが……
大丈夫──
なわけがない。
昨夜、返り血を浴びた留玖を背負ってあいつが──伊羽青文が屋敷に訪れた時は何事かと思った。
これまで、
俺が伊羽邸を訪れることを頑なに拒み、
遊水という名の町人に扮した姿でしか結城家を訪れなかった男の行動とは思えない。
すぐさま、ただごとではないと直感して──
「闇鴉の一味に襲われた!?」
手短に説明された言葉に耳を疑った。
青文はすぐに現場に引き返す、盗賊改めからは神崎帯刀を寄越せと言った後、
今晩襲ってきて死体となった盗賊は六人。
おつるぎ様が昔斬り殺した盗賊も六人だったな、と呟いて、
彼女が混乱状態に陥って、俺の幼名を呼んで倒れたと教えてくれた。
俺には留玖のそばにいてやれと言い残して、青文はきびすを返し──
俺の幼名を呼んで──倒れた……
意識のない留玖の姿に胸が締めつけられた。



