恋口の切りかた

「……おつるぎ様?」

初めて、私の様子に気づいたように、青文が怪訝な顔で私を見上げた。

「初めから、見えてましたか……?」

「いかがされた!?」

声を上げる青文から、一歩下がって、


「私には、見えないんです……」

「え──?」

「初めから……今も、この人たちの顔が見えないんです」


盗賊たちの顔の部分は、暗くて──

いや、顔だけではなかった。

服装も、闇に沈んでぼんやりしていて、身軽そうな格好だとはわかるけれど……


近くには燃えている提灯の明かりがあるのに。


考えてみるとおかしな話だった。


「同じ距離にあるあなたの顔や、姿は、はっきり見えるのに──この人たちのことは、よく見えない……!」


まるで私の中の何かが、認識するのを拒んでいるかのように。