青文は驚いたように死体から顔を上げて、私のほうを向いた。
「あれは、棒術ではなくて──槍術の構えだったんですね」
私たちが駆けつけた時に、棒を構えていた遊水。
ススキ野では実際にその腕を見ることはできなかったけれど、
これほどの使い手ならば、確かに夕刻の浪人たちに一人で対抗できたのも道理だったし、
一年前に出会った頃、あの三人橋の上で達人の都築と素手でやり合えたのも納得だった。
あれは──剣と槍の、免許皆伝者同士の一戦だったということになる。
「構えで、遊水と私が結びつきましたか」
青文は目を丸くして、それから優しく細めた。
「やはり、貴女は武芸の申し子だ」
目の前で腕前を見せつけられた達人に褒められて、私は照れてしまった。
「そ、そんなの……あなたも以前、同じように気づいたじゃないですか」
私が言うと、金髪の男は不思議そうに首を傾げた。
「鬼之介が道場破りに来た時──あなた、『太刀筋』で彼が宮川家の人間だって言い当てましたよね?」
「ああ──」
青文は何のことか思い当たった様子になった。
「鬼之介とは、何度も道場で手合わせしていましたので」
「でも、それは槍の稽古で、刀ではないんですよね?」
「まあ、そうですが。剣の太刀筋にも、槍を振るっていた時の彼の癖がよく現れていましたからな」
鬼之介が国を離れて剣の修行に出てから、随分と会っていなかったので顔は忘れてしまっていましたがね。
青文はそんな風にサラッと結構ヒドいことを言って、
「顔は常に隠していたとは言え、鬼之介はああ見えて聡明な男ですから、私のことにすぐ気がつくだろうと思って、あの時は余計なことを暴露されぬよう釘を刺しておきました」
あの日のやり取りについてそう説明してくれた。
「あれは、棒術ではなくて──槍術の構えだったんですね」
私たちが駆けつけた時に、棒を構えていた遊水。
ススキ野では実際にその腕を見ることはできなかったけれど、
これほどの使い手ならば、確かに夕刻の浪人たちに一人で対抗できたのも道理だったし、
一年前に出会った頃、あの三人橋の上で達人の都築と素手でやり合えたのも納得だった。
あれは──剣と槍の、免許皆伝者同士の一戦だったということになる。
「構えで、遊水と私が結びつきましたか」
青文は目を丸くして、それから優しく細めた。
「やはり、貴女は武芸の申し子だ」
目の前で腕前を見せつけられた達人に褒められて、私は照れてしまった。
「そ、そんなの……あなたも以前、同じように気づいたじゃないですか」
私が言うと、金髪の男は不思議そうに首を傾げた。
「鬼之介が道場破りに来た時──あなた、『太刀筋』で彼が宮川家の人間だって言い当てましたよね?」
「ああ──」
青文は何のことか思い当たった様子になった。
「鬼之介とは、何度も道場で手合わせしていましたので」
「でも、それは槍の稽古で、刀ではないんですよね?」
「まあ、そうですが。剣の太刀筋にも、槍を振るっていた時の彼の癖がよく現れていましたからな」
鬼之介が国を離れて剣の修行に出てから、随分と会っていなかったので顔は忘れてしまっていましたがね。
青文はそんな風にサラッと結構ヒドいことを言って、
「顔は常に隠していたとは言え、鬼之介はああ見えて聡明な男ですから、私のことにすぐ気がつくだろうと思って、あの時は余計なことを暴露されぬよう釘を刺しておきました」
あの日のやり取りについてそう説明してくれた。



