「わからぬのは──緋鮒の仙太に恨みを抱くような者が、如何なる理由で一国の城代家老の屋敷を見張り、襲撃してきたのか……
私はこれでも今日まで、この素顔を知られぬよう用心を重ねて来たつもりですから」
「ゆ……」
私は普段の彼の名を呼びかけて──
「青文様……」
言い直した。
幼い日に見た覆面家老。
その頭巾の下に、遊水の顔が隠されていた──?
聞きたいことが山のように浮かんできたのに、何も言葉にできなくて
ふふ、と青文が皮肉っぽい笑い方をした。
「驚いたでしょう。元盗賊の男が、家老などと……」
私はそう言う男をまじまじと見つめて、槍を構える伊羽青文の姿を見た時に脳裏を過ぎった疑念を思い出した。
「変な感じが、したんです」
「……変な感じ?」
「さっきの、あなたの槍の構え──あれが、鬼之介の道場の無想流槍術の構えなんですよね?」
「ええ、そうです」
「見覚えがあると思った……それも今日見たばかりの……ススキ野で、天秤棒を手にした遊水さんの構えと同じでした」
私はこれでも今日まで、この素顔を知られぬよう用心を重ねて来たつもりですから」
「ゆ……」
私は普段の彼の名を呼びかけて──
「青文様……」
言い直した。
幼い日に見た覆面家老。
その頭巾の下に、遊水の顔が隠されていた──?
聞きたいことが山のように浮かんできたのに、何も言葉にできなくて
ふふ、と青文が皮肉っぽい笑い方をした。
「驚いたでしょう。元盗賊の男が、家老などと……」
私はそう言う男をまじまじと見つめて、槍を構える伊羽青文の姿を見た時に脳裏を過ぎった疑念を思い出した。
「変な感じが、したんです」
「……変な感じ?」
「さっきの、あなたの槍の構え──あれが、鬼之介の道場の無想流槍術の構えなんですよね?」
「ええ、そうです」
「見覚えがあると思った……それも今日見たばかりの……ススキ野で、天秤棒を手にした遊水さんの構えと同じでした」



