男がいなくなった後、
「遊水……さん?」
構えていた槍を下ろす青年を、私はぼう然と見上げた。
「今は、伊羽青文です」
「伊羽様……」
「青文でいいですよ」
彼は見慣れた笑顔で私にそう答えた。
「青文様。本当に……遊水さんが青文様なんですか……」
まだ信じられない気分で言う私に、遊水──いや、伊羽青文という名の男は、悲しそうな目で微笑んで、
それから、
「こやつらの死体を調べろと言っていたな」
厳しい表情に戻って、道の上で絶命している男の死体のそばに屈み込んだ。
「あの人、腕に罪人の刺青があった……」
血に濡れた刀を懐紙でぬぐって腰に納めながら私が呟くと、
「私も見ました。どうやら、島送りになった者のようですな」
青文は、死体を調べながら淡々と答えた。
「あの口振りから察するに──緋鮒の仙太に恨みがある者というところか……」
「心当たりは……?」
私がおずおずと尋ねると、
「ありすぎますね」
含み笑うような気配と一緒に青文は答えた。
「私は賊時代、他の悪党を罠にはめて、身代わりに捕まえさせることなど数え切れないほどやりましたからな」
この国の主席家老は、事も無げにそんな内容を語った。
「遊水……さん?」
構えていた槍を下ろす青年を、私はぼう然と見上げた。
「今は、伊羽青文です」
「伊羽様……」
「青文でいいですよ」
彼は見慣れた笑顔で私にそう答えた。
「青文様。本当に……遊水さんが青文様なんですか……」
まだ信じられない気分で言う私に、遊水──いや、伊羽青文という名の男は、悲しそうな目で微笑んで、
それから、
「こやつらの死体を調べろと言っていたな」
厳しい表情に戻って、道の上で絶命している男の死体のそばに屈み込んだ。
「あの人、腕に罪人の刺青があった……」
血に濡れた刀を懐紙でぬぐって腰に納めながら私が呟くと、
「私も見ました。どうやら、島送りになった者のようですな」
青文は、死体を調べながら淡々と答えた。
「あの口振りから察するに──緋鮒の仙太に恨みがある者というところか……」
「心当たりは……?」
私がおずおずと尋ねると、
「ありすぎますね」
含み笑うような気配と一緒に青文は答えた。
「私は賊時代、他の悪党を罠にはめて、身代わりに捕まえさせることなど数え切れないほどやりましたからな」
この国の主席家老は、事も無げにそんな内容を語った。



