恋口の切りかた

男の口に上った名を聞いた途端、さっと金髪の下の目つきが険しくなった。

「さて、何の話かな」

提灯の橙の光に照らされたニコリともしない白い顔でそうとぼけて、

「貴様──家中の人間の手の者ではないな!?」

彼は鋭く言った。

「何故、貴様らのような者が家老の屋敷を見張り、私を襲った? 言え」

槍をぎらつかせて詰問する家老に、鎖鎌の男は明かりの外から見えない顔で笑い声を返してきた。

「くくく……さあねえ」

「なるほど、ならば捕らえてからじっくり聞き出そう」

冷徹な家老の口調でそう言う男は、普段の遊水とは何だか違って見えた。

「おっと」と言って、鎖鎌の男は半歩身を引いて、

「ここでやり合うのも楽しそうだが──さすがに俺も、間合いの違う獲物を使う達人の侍二人を相手に時間をかける気はない。

さっきの銃声で、いつ人が来てもおかしくないしな」


鎖鎌の男がそう言うなり、伸びた鎖がぴんと張る。


私の目の前で、死体の頭に刺さっていた鎌が抜けて──


金髪の家老の脇で、道の上に倒れ伏していた男の背に刺さり、

転がっていた男が悲鳴を上げて動かなくなった。

先程、青文が殺さずに両膝を貫いて動きを封じた男だ。


「しまった──」

槍を構えて彼が小さく舌打ちして、

「俺の目的は、こいつらが捕まってべらべらと余計なことを喋らねえようにすることよ」

鎖鎌を手元に手繰り寄せ、ぱしんと手でつかんで暗闇の男が笑った。


相変わらず顔は見えないままで──その腕に、輪のように刺青が入っているのが見えた。

罪人の腕に入れられる刺青だった。