恋口の切りかた

提灯を手にした無気味な覆面家老と、夜道を歩きながら──


「御家老様が、祝言の前夜に若い娘と連れ立って……このように表を歩いて宜しいのですか?」

と、私は不機嫌に言った。


自分の非常識さは完全に棚に上げた言いように、先を歩く御家老の覆面の下から低く笑っているような音が聞こえて、

「貴女と連れ立っているところを目撃されても、若い娘と二人歩きをしていると思うものはいないでしょう」

青文は男装している私に、もっともな言葉を返してきた。

「あの場で何を口走るか知れない貴女と会話を続けることや、下手に人払いなどして噂になることよりはマシですからな。

正気を失っているなどと、無礼な発言をしたことは平にご容赦を」

こちらの心の中を見透かしたように、覆面家老は先刻の言葉を詫びた。


周囲には人気がなく、白い塀がずっと続いているばかりだ。

既に遠目では人の顔など全く見えない闇が降りてきていたから、人目を気にする必要はない。

確かに、話をするならこうして歩きながらのほうが誰かに聞かれる心配は少なかったし、
あの場にいた者を納得させるにはうまい言い方だった。


この人やっぱり頭がいいな、とは思ったけれど──


感心している場合ではなかった。

結城家に着くまでに、何とか話をしなくっちゃと、私は言葉を探して、

「どうして、伊羽様は──平然とこんな縁談を進めることができるんですか!?」

気づけば非難の声が口をついて出た。