恋口の切りかた

若い家来が護衛について来たがっていたようだけれど、青文は必要ないと断った。

よく見ると、その若い侍はどこか見覚えがあるような気がして──


「お久しぶりですね、おつるぎ様」

と、声をかけられて私はキョトンとした。

「トウ丸殿……とお呼びしたら、気づいていただけますか?」

くるくるした癖毛の、ひょろりとした侍はそう言って、

「源次郎です。今は、宮川中と名を改めましたが」

と、名乗った。


源次郎!?

私は細身の若者を見て、あんぐりと口を開けた。


確かに、鬼之介から、彼の弟の源次郎が伊羽家に仕えていると聞かされたことがあったけれど。


記憶の中の源次郎は、まるまると太った小山のような少年で、目の前の若者とは全く結びつかなかった。

「まさか、幼き頃に完膚無きまでに敗北した相手が女の子だったとは──知った時は、衝撃で眠れませんでしたよ」

源次郎はいつものんびりした感じの優しそうな子だったけれど、私にそう言う侍は確かにどこかほっとするような源次郎の口調そのままだった。

「今でも相変わらず……男の格好をなさっておいでなのですねえ」

と、源次郎──宮川中はおっとりした調子で言って、懐かしそうに微笑んだ。


それから、なおも供について来ようとしていたけれど、

「少し正気を失っておられるこのお嬢さんを、結城家のお屋敷まで送り届けてくるだけだ。帰りはしばし一人になりたい」

と青文が他の奉公人たちや家来の前で言って、しぶしぶ引き下がった。


正気を失っている、などと言われて私はまたカチンとしてしまった。