恋口の切りかた


 【剣】

円士郎たちと、別れて──

亜鳥を雨宮家の屋敷まで送り届けて──


再び一人になって、夕暮れの武家屋敷の間を歩きながら、

私はどうしても納得できなかった。


本当にこれでいいのか、遊水のことが好きなのではないかと、

ススキ野で目にした二人の姿を思い出しながら尋ねた私に、


「それが武家に生まれた女の務めなのだよ」


仇のもとにお嫁にいく彼女が返してきたその言葉が、耳にこびりついている。


武家の女の務め。

だったら──私も、そのうち好きでもない人のところにお嫁にいくのが務めなのかな。


いつか、円士郎と一緒になるのが嫌だと泣いていた風佳や、

泣いている風佳をなだめていた冬馬、


そして、小さい頃からずっとそばにあった大好きな円士郎の笑顔がちらついて──


別れ際に、亜鳥が残したもう一つの言葉が蘇る。


「おつるぎ様は、本当に好き合った相手と一緒になって、幸せになれるといいな」


彼女は微笑みながらそう言った。



武家の女の務め──

本当に好き合った相手と一緒になって、幸せに──



矛盾する二つの言葉が、耳の奥で何度も何度もこだまして、

雨宮家を後にした私の足は、自然と
結城家への帰路ではない、別の方向に向かっていた。