恋口の切りかた

「円士郎様」


黙り込んでいたら、金髪の男は俺の名を呼んだ。

ろくでもないことを言う時の口調ではなく、改まった感じの呼び方だった。


「あなた様は、俺や彼女とはまた違う価値観を持ってらっしゃるようですがね」


緑色の目玉は俺の表情を観察しながら、真っ直ぐにこちらへと向けられていた。


「それなら尚のこと、悔いの残らないようにな。俺には結局できなかったが──本気で惚れた女なら、自分の手で守り抜け」

「…………」

「こんな世の中で、それができる立場にあるってことを有り難く思うんだな」

「……ご忠告いたみいるぜ」


俺は、腑に落ちないものを感じつつも、大切な少女を思い描いて頷いて──

ふふっと、夕闇に浮かび上がった白い顔が意味深に笑った。


「明日の祝言、宴席には、結城家も参列するんだろ?」

「ああ」

「祝いの席ではくれぐれも、婿殿によろしくな」


そんな読めないセリフを残して──

天秤棒に金魚の入った桶をかけ直し、被り手ぬぐいの金魚屋は風に揺れるススキの向こうへと消えていった。